LPガスの中途解約における違約金、設備費を払わせる条項は「無効」 最高裁

戸建て住宅の購入者とLPガス(プロパンガス)事業者との契約において、ガス利用を途中で解約した際に、設備にかかる部品代などの費用を利用者に負担させる条項の有効性が争われた。

この訴訟の上告審で、最高裁第三小法廷(林道晴裁判長)は2025年12月23日、こうした条項は違法な違約金にあたるとして「無効」と判断する判決を言い渡した。

設備費の支払いを求めていたガス事業者側の主張は退けられ、敗訴が確定した。判決は裁判官5人全員の一致した意見によるものである。

日本LPガス協会の推計では、都市ガスの供給網が整備されていない地域を中心に、国内のおよそ2400万世帯の一般家庭でLPガスが利用されているという。今回の判断は、戸建て住宅の契約に同様の条件を盛り込んでいるLPガス事業者の実務に影響を及ぼす可能性がある。また、戸建て向けLPガス設備の契約の適法性について、最高裁が明確な判断を示したのは今回が初めてとなる。

訴えを起こしたのは東京都内でLPガスを販売する事業者で、同社は戸建て住宅に配管などのLPガス設備を設置し、住宅購入者とガス供給契約を締結していた。

その契約には、供給開始から10年以内に解約した場合、利用者が設備費用を負担するとの規定が盛り込まれていた。実際に顧客が10年を待たずに契約を解除したため、事業者側は設備費の支払いを求めて訴訟を提起した。

一方、消費者契約法では、契約解除に伴い事業者が違約金などを請求する場合、その金額が事業者に生じる「平均的な損害額」を上回る部分については無効とされている。裁判の中で事業者は「解約時に費用を支払うことについて双方で合意していた」と主張したが、顧客側は「事業者に実質的な損害はなく、この条項は無効である」と反論していた。

プロパンガス協会による見解

当たり前のように行われていた不動産業者とLPガス事業者との付き合い方が見直される事が余儀なくされる事を意味しています。建売住宅を安く建設する為、LPガス事業者を活用しガス配管や給湯器やガスコンロなどのガス設備をガス会社負担で建設する事が行われてきましたが、これらはガス会社が先行投資として行い物件購入者との間で10年〜15年の契約年数が設けられていました。(設備償却期間のようなイメージ)

10年間の期間契約で5年経過した段階で半分の精算が終わるという事です。この時にガス会社の乗り換えやオール電化をしようとすると残りの半分を精算しなければならない所謂「違約金」のような形で請求されていました。

これら賃貸物件で特に問題視され、2024年7月に商慣行是正の法改正となっておりますが、今回の判決を受け賃貸物件だけではなく、所有されている一戸建てにも不透明なガス料金への是正に繋がる事がわかります。

注意しなければならないのは、また、林判事は補足として「設備設置費とガスの基本料金、従量料金を区別して請求する場合は判決の射程は及ばない」と意見されている。つまり三部料金制にする事でガス会社はこれらの危険性を回避できるという事になります。不透明なガス料金体系ではなく明瞭会計に設備代金がガス請求にどの程度含まれているのかを明確にする必要がありそうです。

不当な値上げが横行しているプロパンガス業界の流れが一つ変わる判決結果を受け、建売住宅の開発不動産およびガス会社の対応に注目が集まります。

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