サウジアラビアによる宣戦布告
原油価格を巡ってロシアとサウジアラビアなどが対立する格好となっている。
OPEC加盟国と非加盟国OPECプラスは原油減産での協調について、減産を要請しているOPECの意向を受けない6日に表明し、増産を支持したロシア側との対立が影響し大きく原油価格下落となった。
また、それに対立する格好を示し増産の意向を示したサウジアラビア側は、970万バレルの平均生産量から1230万バレルと10日に発表し、1バレル6~8ドルの値下げをするなど、サウジアラビア側の対ロシア政策は異例中の異例といえる。
原油価格市場にも大きく波及し、原油価格下落を加速させている。原油価格と連動するプロパンガスにとっても市場の見通しが悪い事が良くも悪くも影響する事になる。
3日間連日で下落する原油情勢は大きくガソリン関連など、企業へのダメージも多大なものとなっている。
新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに需要が落ち込む中、供給過多になっている事は市場に混乱を及ぼすのは言うまでもない。
WTI(West Texas Intermediate)では、3月6日から急落しており、高値46.37ドルから3月13日15時現在で31.9ドルと下落している。
原油等々のエネルギー資源の多くを輸入している日本にとっては、市場動向次第で消費者へ直結した影響を及ぼしてしまう。
狙いはロシアのアメリカ潰し!?
ロシアとアメリカが協調し合う事は難しいのは周知の事実であるが、原油市場においても様々な思いが交錯している。
シェールオイル・シェールガス業界では、世界一の生産を誇るアメリカを意識したとも噂される。
2014年にも大きく原油価格が下落し1バレル100ドル超えの相場が一時的に50ドル台まで下落した。この時も中国や欧州各国の不景気の煽りから消費需要が落ち込み市場を混乱させた。
この時サウジアラビアはシェールオイルが石油業界の足枷となっている事からもこれを好機とみて増産に踏み込んだが結果として失敗に終わった。
アメリカ国内のシェール関連企業は困窮したが大手シェールオイル企業は逆に大きく膨れる事になり、業界へのダメージは皆無だったと言っても良い。
こうした過去のシェールオイルと石油との市場獲得の争いをみてもロシアの狙いは全く別なところにあるという見方が強く残る。
恐らくロシアは自国の利益で減産施策へ協調しなかったと考えられる。
OPECでの調和ではなく、あくまでロシアとしての利益を追求したのが本筋だと分析される。
コロナウイルスもカタチは違えど消費動向に歯止めが掛かり原油価格に影響を及ぼしている。
WHO(世界保健機構)が発表した「パンデミック」の影響
世界的流行を示す言葉「パンデミック」の発言から更なる消費落ち込みに拍車が掛かる。
消費動向が落ち込む事で呼び込む更なる原油下落への後押しとなっていく。
アメリカはイギリスからの入国拒否を発表し、航空会社はもとより、経済停止に追い込まれる企業も多く経済縮小は免れない。
それに伴い、株式市場へのダメージも大きく売りが殺到している。
新型コロナウイルスの大きな影響を受けている日本のプロパンガス業界では、一時的な値下げ傾向となっているが、ガス会社も慎重な価格設定を行う必要に迫られている。
あまりにも価格自体が乱高下してしまうと、消費者である国民の価格が揺さぶられてしまい、原料調整制度を導入しているガス会社にとってはサービスそのものへの影響になり兼ねない。
新型コロナウイルス自体が収束に向かったとしても市場経済の動きの影響は止まらない可能性も考えられる。
OPECプラスのロシアの対応によってサウジと対立する中、市場価格を混乱させたサウジ、ロシアと産油国同士のシェア獲得の争いが激化し、更なる下落も考えられる。