日本LPガス協会の荒木誠也会長の(アストモスエネルギー株式会社代表取締役)によるプレゼン資料が日本LPガス協会のHPで2020年3月3日に公開されていました。
当協会からもLPガス国際セミナー2020中止│新型コロナウィルス影響の拡大でお伝えした通り、新型コロナウイルスの影響を懸念して中止が発表された日本にとっても重要な位置づけであるイベントが中止された事をお伝えしました。
当日、発表を予定していた貴重な資料が公開されておりましたので、要約してお伝えしていきます。
※詳しくは日本LPガス協会日本のLPガス業界の状況をご参照下さい。
LPガスの需給動向
資源に乏しい日本は輸入に頼っています。国内エネルギー生産は日本国が持つ課題となっていますが、LPガス業界ではこうした問題は国際情勢と共に大きく変化してしまいます。
一般家庭に届けられるLPガスには、「プロパン」と「ブタン」の混合ガスです。これらの輸入状況が分かり易く表現されている資料となっております。
資料内容を割愛させて頂いておりますが、主な輸入先、輸入状況は以下の通りです。
2019年の輸入状況
対象 | アメリカ | カタール | クウェート | UAE | サウジアラビア | その他 |
---|---|---|---|---|---|---|
輸入量(千トン) | 7833.9 | 246.1 | 267.6 | 866.9 | 171.2 | 1316.3 |
輸入割合 | 73.2% | 2.3% | 2.5% | 8.1% | 1.6% | 12.2% |
2014年の輸入状況
2019年は大きくアメリカに依存している事がわかりますが、2014年の5年前には輸入状況は全く異なるものでした。
様々な分野でアメリカに依存している事は周知の事実ですが、エネルギー業界を取り巻くアメリカの発言の大きさも垣間見えます。
国策も含めた輸入先の選定は、価格や条件などだけではなく、国と国との付き合いのあり方、どの国々と深く付き合うか重要な忖度といえるでしょう。
対象 | アメリカ | カタール | クウェート | UAE | サウジアラビア | その他 |
---|---|---|---|---|---|---|
輸入量(千トン) | 1589.7 | 3283.9 | 1392.5 | 2599.3 | 1346.1 | 1392.5 |
輸入割合 | 13.7% | 28.3% | 12.0% | 8.1% | 22.4% | 11.6% |
2014年と2019年の輸入情勢の変化
ご覧頂いた通り、5年間でここまで大きな変化が生まれてきています。なぜアメリカの輸入量拡大に繋がったのでしょうか。これまでは産油国との付き合いバランスが垣間見えます。
シェール革命が大きなカギを握ります。
米国はこれまで産油国としての活動の裏では、シェールオイル・シェールガスの生産に力を入れてきました。
1970年から開発に取り組み生産量は当時に比べると大きく減少しており、主力製品としては難しい現状から一変、2008年から技術革新と共に急激に伸び続けています。
これまで石油に依存していたLPガスにも新たなシェール随伴によるLPガスの可能性が拡がりました。
多くの天然ガスは都市ガスに利用されていますが、LPガスへの精製もシェアを伸ばしているのです。
※参考:日本LPガス協会LPガス事業の現在:生産より
調達先に関してもカナダ、オーストラリアも拡張しており、2020年中旬から更にアメリカ、マーカスフック(Mariner East 2X)にて拡張予定となっているようです。
輸出量を誇る中東の位置づけは、市場においても重要な位置づけであるとの見解を示しています。
世界各国で繰り広げられているエネルギー資源競争が激化していく中で、資源大国に左右されているエネルギー事情を改善する為、再生可能エネルギーを始め日本国としての今後の方向性が重要です。
LPガス業界の取り組み
国内需要は年々減少傾向にありますが、ある程度の需要を一定に確保しているともみえます。
今後の取り組みが注目されています。
やはりプロパンガスの特性を生かした災害対策、また技術革新による効率的なガス機器等々が挙げられています。
災害対策として各自治体への呼びかけも行われ導入も徐々に伸びてきています。
電力や空調を賄うため、大型のタンク(バルク供給)のシステムを災害時用に導入し、避難所として使われる学校などの施設に対策設置を推進しています。
空調は電気稼働がまだまだ多い中でGHP化も少しずつ需要が伸びてきています。GHPは2019年には95万台超えを果たして徐々に普及が始まっていると感じます。
非常電源確保に活躍するプロパンガスはまだまだ多くの方への認知活動は必要です。
結び
2020年オリンピックの聖火トーチにはプロパンガスが使われている。
環境にも優しいLPガスは、持続可能な社会実現に向けた選択肢として、エネルギー業界の中でも大きな役割を国民に示す必要があると考えられます。
プロパンガス協会が描く今後の業界革新
生活の基盤となるガス代が高騰している事からも不信感を募らせる消費者の負担を軽減させる政策が重要です。
ガス料金の透明化を図り、利用者側に分かり易く明瞭会計にしようといった動きが活性化している中で、高い料金設定を維持し続けたい各ガス事業者側の思惑と摩擦が起きていると感じています。
親しみ易いエネルギーであるには、毎日安心してご利用して頂けるガス料金が安価でなければなりません。
地域にしっかりと根付くエネルギーになる為には、消費者の皆様の意識改善も重要です。
昔からのお付き合いやご近所付き合いといった理由から、ガス会社を変更しない消費者の方も多いと感じています。特に大家様はガス会社との関係が深い事も多く、消費者側の気持ちが反映していないケースも多発しています。
当協会は、顔見知りや知り合いだから安心できる訳ではありません。適切な契約条件や地域の適正価格についてアドバイスしています。
都市ガスにも負けない価格設定の業界を作るには、各消費者様、ガス会社様の意識がより向上する以外に方法はありません。